家族信託 事例1

事例1高齢の資産家の方が認知症に備えて
不動産の管理を相続人に任せたいケース

70代の地主さんでいらっしゃるXさんは、自宅兼商業収益不動産であるビルとマンションを数部屋所有しています。Xさんには奥様(Yさん)とお子様2人(長女Aさん、長男Bさん)がいらっしゃいました。Aさんは結婚されて出て行かれており、お孫さんもいらっしゃいますが、Bさんはまだ結婚しておらず、Xさんが所有している不動産の1部屋を借りて住まわれています。
今はXさんが基本的に全ての不動産を管理し、税金等も支払っていますが、最近物忘れが多くなってきており、できれば近いうちに相続対策を行いたいということでご相談にいらっしゃいました。また、身内だけで全ての手続きが済むのであればそうして欲しいとの要望もありました。

問題となるのは、今現在Xさんが行っている不動産の管理や税金の支払を今後Xさんができなくなった場合にどなたが行うかということと、最初にYさんに相続させるのは良いとしても、その後子供2人にどのように財産の承継させるのが良いかということです。

解決策として、奥様であるYさんに不動産の管理修繕や税金等の支払を任せるには負担が大きいことから、Xさんを委託者兼受益者、Aさん、Bさんを共同受託者として信託契約を締結し、Aさん、Bさんの2人にまずは不動産の管理等を任せることにしました。
こうすることで、Aさん、Bさんどちらか一方が不動産の管理をした場合と比べて、両方が合意のうえで手続きをすすめていくという相互監視の役割を果たすため、不正を行うことがなくなります。
そして、今後Xさんが死亡した際には、Yさんが受益者となり、不動産から得られる収益を受け取ります。その後Yさんが死亡した場合は、Aさんがマンションを、Bさんが自宅兼収益不動産を相続するということまでXさんに決めて頂きました。
Aさん、Bさんにはマンションの処分権限もありますので、もしXさんやYさんが老人ホームに入る等する際に現金が必要になった場合は、Aさん、Bさんの判断で売却も可能です。

ポイント奥様とお子様方三人に、都合よく効率的に
財産相続ができる

信託を利用せず、遺言書を作成するだけですと、Yさんに全ての財産を相続させることは可能ですが、Yさんが亡くなった後はAさん、Bさんの話合いで財産の分割を行うか、Yさんに遺言書を作成してもらい分割方法の指定を行う等する必要があります。また、Xさんが認知症になった場合は後見人が全ての不動産の管理を行うことになるため、Aさん、Bさん共同での管理は基本的にはできなくなりますし、マンションを売却する際にも家庭裁判所の許可が必要になり、時間と手間がかかります。

このようにXさんが望む方法を実現するために家族信託を利用し、また、Xさんが決めることによって、ご家族も納得して財産の相続手続に協力して頂ける状況を作ることができました。